誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします



私が純粋かどうかはさておき、お兄ちゃんはお姉さんのことを誤解している。
お姉さんがお兄ちゃんのことを話す時の、表情、声、トーン、あれは間違いなく恋をしているものだったのに。


「お兄ちゃんは、お姉さんのこと、好きじゃないんですか?」

「うん? 好きだよ」

「じゃぁ、もっとふたりの時間を作ってください」

「それは百花ちゃん次第かな」

「え?」


どうして、私次第なの……?
その意味を尋ねようとした時だった。
テーブル席の1人がグラスを床に落としてしまい、ガッシャ―ンという音が店内に響く。


「すみませんっ!」

「あ、いいですよ。お怪我はないですか?」


カウンターからテーブル席に声を掛ける。
その私の向かいにいるお兄ちゃんが、吐き捨てるように呟いた。


「っち……うっせぇな」

「え」

「居酒屋じゃねぇーんだよ、クソガキどもが」





――――――違う。

この人は『シンお兄ちゃん』なんかじゃない。