「ちょっと、ごめんなさい」
人数分のおしぼりとお箸を準備しながら、お兄ちゃんに声を掛ける。
「賑やかそうな客だね、常連さん?」
「3回目……かな。気に入ってくれたみたいで」
「ふーん」
テーブルについた3人組のお客様は、だいたい私と同じくらいの年齢。
うちのお店では珍しい客層だから、不思議に思ったのかな。
オーダーを聞きに行ったり、お酒の用意、料理の提供と忙しくしている間、お兄ちゃんはどこかに電話を掛けていた。
「お姉さんですか?」
一息がついたところで、丁度お兄ちゃんの電話も終わったようだ。
電話の相手を尋ねた私に、お兄ちゃんが苦笑しながら頷く。
「嫉妬深くて困るよ」
「それだけお兄ちゃんのことが好きなんですよ」
「あいつが? まさか」
両手を広げて、おどけたポーズをする。
その表情はどこか冷たくて、私は違和感を覚えた。
「プライドの高いお嬢さんなんだよ、常に優位に立ちたいんだ。だから、俺が外で何をしているか把握していないと気が済まないってわけ」
「そんな風には見えなかったけど……」
「百花ちゃんは純粋なまま真っすぐ育ったんだね」



