「32歳独身、まさに男盛り。特定の恋人はいないみたいよ」
「その情報ってどこで入手するの?」
果歩は私の質問に答えず、人差し指を顔の前で左右に振った。
「女子社員の間では常務のことを冷たいって言う人もいるけど、それは単に誰にでも愛想を振りまくタイプじゃないってことでね、むしろクールさが良いと思うの」
「私は冷たい人は嫌だなぁ」
「分かってないなぁ、百花は。ああいうクールな男が、ベッドではどれくらい熱くなるか気になるじゃない」
「ベッドで……」
「やだ、百花。その歳で経験ないとか言わないでよ」
「……」
私が無言だったからか、果歩はギョッとした表情をしたけども。
そこは突っ込んではいけないと察したらしく、話題を変えてくれた。
「そういえば、そろそろ3年だね」
「あぁ……そうだった。残るのは難しいかな」
「部署を変えたらいけるっていうけどね」
派遣社員に大きく圧し掛かる「3年ルール」。
その時期が近づいてきているのだ。
「果歩はどうするつもり?」
「うーん、できれば永久就職したい」
「じゃぁ、夜遊びをやめてそろそろ1人に絞らなきゃ」
「そうなんだよね。だからせめて最後に吸えるだけの生き血を色んな男から……」
結局、話が戻ってしまった。



