誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします



その日の夜、律さんが珍しく早く帰って来た。
ここのところ会話が全くなく、余所余所しい雰囲気だったので、話し合う場を設けてくれるのかと思いきや、どうも翌日から出張のようで……。


「大阪に3泊ですか?」

「あぁ」

「荷造り手伝いましょうか?」

「自分でやるから必要ない」


素っ気ない態度に変わりなし……と。
スーツケースを出して、必要なものをパッキングし始めた律さんの邪魔にならないようにと自室に向かう。
その途中、中途半端な場所に置かれてあったゴルフバッグに足の指をぶつけてしまった。


「―――あぅっ!」


足の指をぶつけた時って、ぶつけた時よりも数秒遅れて激痛がくるんだよね。
痛たたたたたた。
もう片方の足で、ぶつけた方の足を強めに踏んで痛みに耐えていると、洗面所にいた律さんがこちらに来た。


「どうして君はいつもそそっかしいんだ」

「すみません、どうぞお構いなく」

「見せてみろ」


律さんはそう言うと、屈んで私の足を掴んだ。


「やっ、平気ですって」

「血が出てるぞ」

「嘘!」

「嘘だ、少し赤くなってるけど折れてはなさそうだ」


この状況で、嘘とかいいます? 普通。