だけど、それだけお兄ちゃんのことが好きってことだよね。
そう考えたらお姉さんがとても可愛い女性に思える。
おふたりは確かお見合いだったと聞いたけど、ちゃんと恋愛をしているんだ。
少なくともお姉さんは、お兄ちゃんに恋をしているんだね。
だったら、私とお兄ちゃんの関係は黙っておいた方がいい。
個人的に会うのも控えた方がいいよね。
律さんの言う通り、要らぬ誤解を招きたくない。
「百花さんも、しっかり律くんの手綱を引いておいた方がいいわよ」
「うちは、そんな」
「そんな弱腰じゃダメよ、どんなに真面目な男でも鼻先に餌があれば食いついちゃうんだから。身近なところで言えば、職場関係ね。近くにいる若い女には気をつけなさい」
それって、やっぱり秘書とかー?
「……肝に銘じておきます」
まぁ、うちの場合は浮気も何も関係ないんだけどね、と心の中で呟く。
律さんとあの秘書が付き合っていても、問題ない。
当然、私は探偵を雇うこともなく監視することもなく、知らないフリをするだけ。
そう考えた途端、とてつもなく寂しい気持ちになった。
「今日は話を聞いてくれてありがとう」
「いえ、私でよければいつでも」
「百花さんとは仲良くしたいわ。また一緒にランチしましょう」
「はい、また誘ってください」
お姉さんは良い人だし、好きだけど。
また、この手の話をされたら、自分と比べて寂しい気持ちになるかもしれない。
そう思いながらも快諾していて、我ながら調子がいい奴だなと思った。



