誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします



お兄ちゃんは、うんうんと頷いて、また優しい笑顔を浮かべた。
小さい時、この笑顔に何度助けられただろう?
寂しい時は、いつも「大丈夫だよ」って、励ましてくれた。
その笑顔をまた見ることができるなんて、夢みたいだよ。


「私、シンお兄ちゃんに聞きたいことがいっぱいあるんです」

「あはは、それはちょっと怖いなぁ。お手柔らかに頼むよ」


ロビーに向かう間も、興奮が止まらない。
再会できた嬉しさと、また笑い合える幸せで、胸がいっぱいになる。
あの頃のキラキラした気持ちが、一気に溢れかえってくるよう。


「まずは……。どうして、自分がシンお兄ちゃんだって、教えてくれなかったんですか?」

「そりゃぁ、だって律に悪いだろ」

「律さんに?」

「僕たちの関係を誤解されたくなかったし、今更蒸し返すことでもないかなって」


あ、そっか。
私と律さんは恋愛結婚したことになっているんだった。


「僕は、百花ちゃんが幸せならそれでいいんだ」

「シンお兄ちゃん……」


優しいなぁ、昔も今も変わらず優しい。
私の幸せを願って、黙っていてくれたんだね。


「シンお兄ちゃんも幸せそうで、良かったです」

「……そう見える?」

「え、違うんですか」