誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします



「お兄さん、あのちょっとお時間ありますか?」

「ん? どうしたの、何か相談事?」

「いえ、そうじゃないんですけど……」


ここではさすがに聞きにくい。
私の考えが伝わったのか、お兄さんは腕時計に視線をやってからスマホを耳に当てた。


「あ、僕だ。午後からの予定を30分ずらしてくれないか? あぁ、頼む」


通話を切り、大丈夫だよ、と微笑む。
あぁ、この笑顔……やっぱりシンお兄ちゃん、だよね?


「ロビーでいいかな? あんまり遠くへはいけないから」

「すみません、忙しいのに」

「何言ってんの、可愛い妹のためならこれくらい平気、平気」

「……シンお兄ちゃん」


思うより先に、唇から言葉が零れた。
お兄ちゃんは少しびっくりしたように目を丸くし、私の顔を見つめている。


「シンお兄ちゃんだよね、子供の頃によく遊んでくれた。私、今まで気が付かなくて」

「百花ちゃん……」

「毎年、誕生日にお花を贈ってくれてありがとうございます。私、お花をもらう度にシンお兄ちゃんのことを近くに感じていたんです!今年のお花も可愛くて、」

「今年も?」

「先日贈ってくれたやつです!」

「あぁ、あれね。良かった、気に入ってくれて」