誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします



こんな大きな企業のトップに君臨している桐ケ谷家って、やっぱりすごい人たちなんだなぁ……と、改めて思う。
律さんだって家で仕事をしている姿を見ることはあっても、こうして会社にいるところを見たことがないから新鮮かも。
その新鮮な律さんを探して歩いていると、不意に後ろから腕を掴まれた。


「あ、律さん」


名前を呼んだ私に、律さんは頷きながらも唇に人差し指を当てた。
どうやら通話中のようだ。
しかも、話しているのは英語? ドイツ語?
新鮮を通り越えて、驚愕だよ。


「悪い、書類は?」

「はい、これで合ってますか?」

「助かった、恩に着る」

「そんな、大げさですよ。忙しいみたいですし、私はこれで帰りますね」

「ちょっと待った」


律さんはそう言うと、胸ポケットから細長い封筒を取り出した。
受け取って中を見てみると、


「ミュージカルのチケット? あ、これ観たかったやつ」

「さっき貰ったんだ。友達と行っておいで」

「ありがとうございます」


嬉しいなぁ。これよく見たらこれ、プレミアムチケットだ。
入手困難なチケットを貰えるなんて、ラッキー。