「びっくりした。律さん、あの私に電話を?」
「あまりにも帰ってくるのが遅いから、何かあったんじゃないかと思って電話しただけだ」
「すみません、気が付かなくて」
「遅くなるなら連絡するだろ、普通」
あれ、もしかして律さん、怒っている?
ソファの裏側から背もたれに腰を掛け、腕組みをしている。
その指が、早いリズムで片方の腕を叩く。
「ごめんなさい」
「別に謝って欲しいわけじゃない」
「……次からは連絡します」
「変な客でも来たのか?」
「いえ、変ではないんですけど、ちょっとしつこいお客さんが来ていて」
「出禁にしろ」
「え?」
「店側の迷惑を考えない客なんて要らないだろ。独り経営している女将を深夜まで付き合わせるなんて、まともな奴のすることじゃない」
何も、そこまで……。
だけど、律さんの言っていることは正しいし、心配してくれたからこそ怒っているんだよね。
ましてや、私が電話に出なかったから余計腹立たしいのだろう。
「分かりました、出禁にします」
「そうしろ」
「電話にもすぐ出ます」
「仕事中は無理だろ」
「今度しつこい人が来たら、律さんに連絡します」
「あ、あぁ……そうしろ」



