誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします



ドキドキするけど、冷静な自分もいる。
律さんと私は形だけの夫婦で、3年もすれば離婚することが決まっていて、所詮は住む世界が違う人だし、色々と助けてくれるのは『契約』の1つだし。

でも、だけど――。


「珈琲、淹れましょうか」


ごちゃごちゃ考えてしまうのがしんどくなった私は、気分転換もかねてキッチンへ向かった。


「あぁ、頼む」


律さんがそう頷いたところで、彼のスマホが鳴った。
タブレットを操作する手を止めたくなかったのか、彼は電話をスピーカーフォンにする。


「はい」

『あぁ、私だ』


この声は、お父さん?


「何かありましたか」

『先週の会議の件で確認したいことがあったんだが、まだ出社してないのか?』

「まだ家です。確認したいこととは?」

『〇〇の調査報告について、~~~~は、~~~で、』


仕事の話とはいえ、親子なのに淡々としているのね。
お父さんも律さんと同じで無駄口を叩かないタイプなのかな。
お兄さんなら、まず世間話から入りそうだよね…。

しかし、この前の食事会でも思ったんだけど、お父さんのこの声。
深みのある渋い声で、聴き心地が良い。
そして、この声を私はどこかで聞いたことがあるような気がするんだ。
気のせいかな?