律さんはそう言うと、スマホを取り出してどこかに電話を掛けた。
違うのに……本当にただの誤解なのに……なんて言ったところで聞いてもらえる雰囲気ではなく、すぐに迎えの車が到着する。
「食事会は俺1人で行くから、君は家で休んでいろ」
「えっ、でも」
「店も今日は休むんだ、いいな」
「そういうわけにはいきません」
これだけは、きっぱりと主張させて頂きます。
その意思が伝わったのか、律さんは呆れたような溜息を吐き、私の頭の手を乗せた。
「無理はするなよ、倒れたら元も子もない」
「大丈夫です」
だって、本当は具合なんて悪くないもの。
今日の律さんのビジュアルがあまりにも完璧で、ついドキドキしてしまっただけだもん。
果歩が余計なことを言うから、少し意識してしまっただけで。
体調は至って元気……あれ?
元気のはずなんだけど、もしかしたら本当にちょっとだけしんどいかも。
そう思った瞬間、体の力がふわっと抜けた。
「百花!」
律さんに名前を呼ばれた気がするけど、気のせいかな……。
* * *
『お兄ちゃんー、シンお兄ちゃん、待ってー!』
ん……これは夢?
道の先にいるシンお兄ちゃんが、おいでおいでと手招きをしている。
走って追いかけて、あともう少しで掴めるってところで目が覚めた。



