* * *


デートに向かった果歩を見送った私は、そのままカフェに残り律さんからの連絡を待った。
今日は彼の付き添いで、取引先企業の社長夫婦と昼食を取ることになっている。
こうした会合は結構多く、改めて律さんの大変さを知る。
大事な仕事相手とはいえ、貴重な休日に接待をしなくてもいいのに。


――RRR

(あ、電話がかかってきた)


『今、どこにいる?』

「今朝、話したカフェにいます」

『2分で行く。外で待っていてくれ』

「分かりました」


てっきり車で来ると思い、車道にじっと視線を向けて待っていると。
不意に後ろから名前を呼ばれてびっくりした。
振り向いた先、律さんが立っている。


「あ、歩きでしたか」

「天気がいいからな」


へぇ、この人でも天気の良い日は歩きたくなるのか……。
移動といえばいつも車で(しかも運転手付き)、その移動時間でさえ仕事をしているのに。


「少し歩くけど、いいか?」

「はい」


私が頷くと律さんは無言でこちらに手を伸ばした。
どうやら荷物を持ってくれようとしているらしい。


「大丈夫です、そんなに重い物じゃないので」


真っ赤な下着を持たせるなんてこと、できません。