不思議なことに、律さんは私のご飯を断ったことが1度もない。
食べますか? と聞くと、必ず、貰うと答える。
しかも、これまた……。
(ほんと、上品に食べるなぁ)
お箸の持ち方も、魚の食べ方も、お味噌汁をすする仕草さえ育ちの良さがにじみ出ている。
さすが、おぼっちゃま。
「来週の日曜日」
「…………」
「聞いているか?」
コンコンッと、律さんが目の前のテーブルを指で叩く。
しまった、ぼんやりしていた。
「ごめんなさい、聞いてなかったです」
「別に謝る必要はない」
「あの、何ですか?」
「来週の日曜日に家族で食事をする予定だから、そのつもりで」
「家族……」
ということは、お父様である社長やお兄様の専務と会うってことだよね?
それは緊張する……。
「全く面倒な話だよな。まぁ、でもこれも契約の1つだから。我慢してくれ」
「……はい」
会話が終わり、律さんが食べ終わった食器を下げようとしたら止められた。
「君は俺の家政婦じゃないだろ。自分のことは自分でする」
「そ、そうですね。じゃぁ、私はもう寝ます」
「ああ」
「おやすみなさい」



