誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします



もしかして、新手の詐欺なのかな?
でも私を騙したところで、何かメリットがあるように思えないけど。


「百花に一目惚れしたんじゃないのー?」

「まさか、絶対何か裏がある」

「裏があっても、結婚相手として考えたら良好物件だと思うけどなー。ハナちゃんだって、これで安心させてあげられるじゃない?」

「それは、そうだけど」


ハナちゃんというのは、私の母方の祖母のことだ。
現在85歳、近くで独り暮らしをしている。
母亡きあと、唯一の身内だから一緒に暮らそうと提案したけど、『若いもんの世話にはならない』と言って聞いてくれない。
私の幸せをいつも願ってくれるハナちゃんを安心させたい気持ちはあるけど。
だからって、よく知りもしない人と結婚なんてできないよ。


「確かに交際期間もなくいきなり結婚っていうのは、びっくりだけどね」

「でしょ、せめて ”付き合ってください” だよね。まぁ、常務のような人が私に交際を申し込むことすらあり得ない話だけど」


そんな会話をしている時だった。


「あ、ごめん電話」

「誰?」

「うーん、知らない番号」

「常務だったりして」

「まさか」

「はい、もしもし――――え!? ハナちゃんが??」