誠に不本意ではございますが、その求婚お受けいたします



あぁ、もうお金持ちの考えることって本当に分からない。
明日買うお米に困ったこともない人の思考なんて、知りたくもないよ。


「クイズは好きじゃないので、本題に入ってください」

「意外とせっかちなんだな」

「怒りますよ」


どうせ、もうすぐ契約終了するんだ。
常務であっても媚びる必要はない。


「店の家賃は君の言い値にしよう。今のままでもいいし、望むならタダでもいい。管理ができるならビルの権利を譲っても構わない」

「は?」


ちょっと……。
言っている意味がさっぱり分からない。
そんな都合の良い話があるわけないでしょ。


「ただし、条件がある」

「……なんですか?」

「俺と結婚して欲しい」

「えっ」


本当に……。
ほんと―――――うに、金持ちの考えることが分からない。
結婚してくれって、私と!?



* * *



「なに、その美味しい展開。少女漫画じゃん」

「美味しくないし、少女漫画なら主人公はもう少しピュアだよ」


2日後の休日。
お店の準備を手伝いに来てくれた果歩に、常務との一件を話すと。
彼女は分かりやすいくらい興奮して、あれこれ聞いてきた。


「で、どうするつもり?」

「どうするも何も、常務のことなんてよく知らないし、会話をしたのだって一昨日が初めてなんだよ? それがいきなり結婚って」