別れと弱さと始まりと



惨めな気持ちを隠し、同僚に別れを告げタクシーを探した。


空車のタクシーを停めて乗り込むと後ろから乗り込む人がいる。同期の小坂だった。


「なんで来るのよ」


「俺も帰るから、ほら運転手さんに住所言って」


仕方なく住所を告げた。


自宅へタクシーが着くと何故か小坂も降りる。


「ちょっとなんなの?」


「いいから、部屋まで送るよ」


部屋を開けると小坂まで入って来た。


「部屋までじゃなかったの?」


「部屋までだろ?部屋」とリビングを指して言う。


呆れた男だ。


リビングへ入ると抱きしめられた。


「泣いていいぞ」


「えっ?」


「俺の胸で泣け、貸してやる」


「うっ…借りてやる」泣いた。思いっきり泣いた。


「なんでわかったの?」


「うん?泣きそうな顔してただろ」


「理由聞かないの?」


「話したかったら話せよ、いつでも聞くから」


「ありがとう」


「どういたしまして」爽やかな笑顔だった。


小坂ってこんな表情してた?ガラスの曇りが取れたようだった。