雪が積もっていた木には
あっという間に桜が咲いていて
春になった。




あれから私たちは、何度も会った。
仕事終わりに食事に行ったり
近くの公園へサッカーしに行ったり
ふたりで飲みに行ったり
べろべろになった日にはお互いのお家まで送り合っては
朝日を見ながら帰って
誰にもしたことないお話をした。
お互い、一番の理解者だった。


あの日までは。





「ねぇ、マヤ。今日はベッドまで運んでほしい」

いつもより酔っ払っているハルが私に言う。


ハルを抱えながら慣れた手つきでオートロックを解除する。
私の肩の上でふにゃふにゃ言うハル。
私は知ってる。
この男は、女慣れしてる。
体だけの関係の人が何人もいることも。
なんでも知ってる。