「あ、あの……」

「じゃ、ママは荷造りがあるから、先においとまするわね〜」




口を開きかけた私を無自覚に遮ったのは狼くんママ。



いつの間に、食べ終わっていたのか。
綺麗に片づいたお皿の上で、ごちそうさま、と手を合わせて食卓を後にする。

そそくさと去っていってしまったため、引きとめるスキもなかった。




「……」




また、狼くんとふたりきりになる。



しーん、とした空間に、食器がお皿にぶつかる音がやけに響く。

気まずさをごまかすために、もごもごとご飯を口につめこんだ。

美味しい……けれど、まだ心が落ちつかなくて、うまく味わえない。




ちらり、と狼くんを盗み見る。
いつもと変わらない顔のまま、黙々と食べすすめていた。


箸の使い方が、きれい。



なんて今はそんなことどうでもよくて……。




ほんとうに、狼くんがなにを考えているかがわからない。


突き放したいのなら、ひと思いに突き放してくれたほうが、まだわかりやすい。




中途半端に拒絶されると、まだちょっとは……って期待しちゃうんだよ。

わかってる?