昔は同じくらいだった身長は、今やすっかり伸びて私よりずっと高い頭の位置。

久しぶりに聞いた声は、声変わりを経てずいぶん低くなっていて。

いつのまに染めたのか、元は漆黒だった髪色が、グレーというか、灰色というか……になっている。



────でもそれくらいの変化はあたりまえのこと。

だって10年も経っているんだもの。



だけど!




「あのう……狼、くん」

「なに」




なに、って言ったから私の話を聞いてくれる気になったのかと一瞬期待して。

でもすぐさま裏切られる。




「これ以上騒ぐなら黙らせるけど」




どうやって!?!?
思わず目を見開く、しかし、狼くんの目がマジだ。

黙らせるって、つまりは煮るなり焼くなり殴るなり……?



「えええええ、狼くんそれは犯罪では……」

「……うざ。うざいしキモいしさっさとどっか行けよ」



また、あの凍てつくような視線を向けられて。


近原ひな、16歳。
さすがに悟ったのだった。



離れていた10年もの間に、私の知っている狼くん────“優しくて大好きな幼なじみの狼くん” は跡形もなく消え失せて、おまけに狼くんの記憶には私は少しも残っていないんだということを。