そう言うと、狼くんが「ひなのそういうとこ、タチ悪いほんと」と枕に頭をうずめてしまった。
数秒後のち、がばっと上体を起こした狼くん。
襟元をはだけさせて。
「ん、どーぞ」
「……!」
これは、つけてもいいってこと……?
遠慮がちに、狼くんの首筋に歯をあてる。
背徳的な感触に、それ以上力を入れられずに困っていると。
「もっと強く」
狼くんがうながしてくる。
それで、誘われるように、かぷりと噛みついた。
狼くんが少し体をふるわせて、それで唇を離せば、うっすら赤い痕。なんとなく優越感、なんて思っていると。
「……電話?」
プルルルル、と家電の音。
それから、同時に私のスマホの着信音も鳴り響く。
着信音の二重奏、狼くんは家電の方へ、私は自らのスマホに耳をあてる。
「もしもし?」
〈 あ、ひな、元気にしてる? パパの仕事がようやく落ち着いたから、今日、そっちに向かうわよ 〉
「えっ、今日……っ?」
〈 そうよ、藤川さんとこにはたくさんお世話になっただろうから、ちゃんとしっかりお礼を言っておくのよっ 〉
言うだけ言って、ぷつんと途切れる。
今日のことを今日言ってくるのはママらしい。
……けれど。