「じゃあ、あのとき “寂しくない” って言ったのはなんで」
「あのとき?」
ぜんぜん、身に覚えがない。
きょとんと首を傾げた私に、狼くんがかいつまんで説明してくれる。
私がここから引っ越した日、狼くんが『寂しくないのか』って私に聞いたら、『寂しくない』って答えたって。
「ええと……」
正直、そんな会話があったことすらよく覚えていない。
でも言われてみれば────たしかに、そんなこともあったような。
少しずつおぼろげによみがえってくる記憶。
『……っ、ひぃちゃんは、寂しくないの?』
『寂しい?』
『遠くに行って、離れて、会えなくなっても、寂しくない?』
『うんっ! 寂しくないよ、ぜんぜん!』
そうだ、そうだった。
私があのとき “寂しくない” と迷いもなく答えた理由は。
「半分くらいは、強がりだったんです。離れても平気だってへっちゃらだって、思いこまないと離れられなくなるから」
「……」
「それから、もう半分は────」



