狼くんが、すう、と息を吸う音が聞こえた。
それで、耳元で。
大事に守り続けた宝物を手放すかのように、狼くんがそっと囁いた。
「────ひな、好き」
「……っ、え」
「ずっと、好きだった、ひなのこと、死ぬほど」
今度こそ、本気で幻かと思った。
だって、ものすごく。
ものすごく私に都合のいい言葉が聞こえて。
待って、“好き” って、誰が誰を……?
そんなはずない。
だって、狼くんは。
「隠しておくつもりだったけど、もう、なんか無理だった」
「……っ、あの」
「ごめん。……めちゃくちゃ好き」
夢と現実の境目すらわからなくなったのかもしれない。
狼くんに “好き” だなんて囁かれて、ぎゅっと抱きしめられて、こんなの夢じゃなきゃおかしい。
おかしい……、し。
「あの……っ! なんで、そんなこと、言うんですかっ?」
「……?」
「隠しておくつもりだった、とか! ごめん、とか!」
「ああ」
狼くんは、ふっと笑う。
甘やかで、でも切なげな笑顔。
何かをあきらめたような顔。
それで、なにを言いだすのかと思えば。
「だって、ひなは俺のこと “きらい” なんじゃねーの」
「っ、はい?」



