狼くん、ふれるなキケン!



距離感がつかめなくて、不器用に手を繋いだままの帰り道。


夜空にはまんまるなお月さまがぽっかりと浮かんでいた。



狼くんは何も言わなくて、私もどうしていいかわからなくて。

結局会話ひとつもないまま、家に戻ってきた。




もう、ここが居場所になっているんだって改めて実感する。

戻ってきたこの家は、もとから私の家だったんじゃって勘違いするほど、もう “私たちの家” だった。




鍵を開ける音がやけに響いて、扉がひらく。

玄関に足を踏みいれて、背後で扉のしまる音が響いた瞬間。





「……っ、ひゃっ」




何の前ぶれもなく、狼くんの腕に囲われた。


逃げ場を失うのははじめてのことじゃない、けれど、これは、はじめてだ。



壊れものを扱うかのように、そっと。

何かにおそれているかのように、優しく、腕のなかに閉じこめられる。



その甘やかな行為に、心臓がとくんと鳴った。




「っ、狼くんっ?」

「……ひな」



狼くんの掠れた声が耳に直接降りかかってくる。


少しくすぐったくて身をよじるけれど、すぐさまその動きは封じられてしまった。


やさしい拘束、私が逃げようとしていないから成り立っているんだと思う。