「……!」
ガチャリ、と扉がひらいた。
小雪ちゃんが帰ってきたんだ。
結局、インターホンの正体は誰だったんだろう。
そんなことを考えて視線を上げる、と。
「っ、どうして」
びっくり、なんてものじゃない。
心臓が止まるかと思った。
こんなところに、ぜったい、いるはずのない────狼くん。
幻覚なのかと思った、会いたすぎて、幻でもつくりあげてしまったのかと思った……けれど。
「ひな」
幻にしては、リアルすぎる。
それに────汗にぐっしょり濡れたシャツ、苦しげに息を切らして、肩を上下させている。
もしかして、ここまで、走ってきたの……?
「どうして……っ」
わけわかんないよ、狼くんにとって、私なんてどうでもよかったんじゃないの。なのに。
「……迎えに来た」
座りこんだ私に向けて、まっすぐに手のひらが差し出される。
紛れもなく、私を待つ大きな手。
ねえ、どうして、狼くんがそんな顔をするの。
「なんで、今さら……っ」
「……うん、ごめん」
それでも狼くんは手をひっこめない。
「ひな、帰ってきて」
単純で、ちょろい。
もう認めてもいい。
だって、狼くんにそんな風に言われて断ることなんて、私には到底できそうもない。
こくっと頷いて、狼くんの手のひらに自分のそれをそっと重ねる。
おそるおそる重なった手のひらを、振り払われることはいっさいなくて、ほっとする。
「帰ろう」
「……っ、はい」



