- side ひな -






「ひなちゃん、ちょっと落ち着いた?」

「うう、はい……」




ぐすぐすと鼻をすする。


小雪ちゃんが淹れてくれたあたたかい紅茶にそっと口をつけると、心が少しずつほぐれていくような気がした。


小雪ちゃんには……それからまやくんにも、情けないところを見せてしまったな。




『実家に帰らせていただきます……っ!!』




咄嗟にあんなことを言って飛び出してきてしまったけれど、帰ることのできる実家なんて近くにはないし、だからといって狼くんのいるあの家に戻ることもできなくて。


結局、小雪ちゃんに電話をかけて泣きついて。
そうしたら『うちに来たらいいよ』って言ってくれて、まやくんが迎えにきてくれて────今に至る。




「私はひなちゃんに頼ってもらえて、うれしいよ」




どれだけ優しいの。

こんな時間に家に押しかけてきて、ふつう、迷惑なはずなのに。



おまけに狼くんとのあれやこれやの話もぜんぶ、聞いてくれた。


おかげでちょっとは冷静になれてきたかもしれない。