狼くん、ふれるなキケン!



その拍子に、さらりと流れ落ちたミルクティーの柔らかな髪も、そのピンクに染まった毛先も、見覚えがない。


……ぜんぜん、わかんない。


む、と考えこみながら、ふと。




「……っ」




視線を向けた先で、彼の瞳とぶつかった。

ヘーゼル色のまんまるで大きい瞳には、ひかりがさしこんで、きらきらしていて、ちょっと宝石みたい。



……あれ。



私、この瞳を知っているかもしれない。

うーんと、記憶のどこかでひっかかる……ええと、たしか、ずっとずっと昔……。



記憶の引き出しをひとつずつ開けていく。


────あ。




「どう? そろそろ思い出した?」

「……まやくん、ですか?」




薄れて消えかかっていた思い出をなぞるように、その名前を口にすれば。




「ふ、思い出すの遅すぎだよねー」

「それはまやくんが変なヒントを出すから……!」




あんなことやこんなこと、とか。
寝たとか、ハダカの……とか!




「だって事実でしょ。一緒に寝たこともあるし、ハダカだって見たことあるじゃんねー」