息が詰まりそうになる感覚なんて、今までの私だったらわからなかったと思う。だけど……今は。


狼くんのことを考えると、苦しい。
息さえ上手くできない。



まやくんも、こんな気持ちになることがあるのかな。

そう思うと、少し親近感が湧いた。




「解放感があっていいでしょ、ここ。涼しいしねー」

「……そうですね」



ちょうどよく日陰になっていて、外の気温はうだるくらい暑いのにもかかわらず、涼しい風が髪をさらっていく。


心地がよくて、波立った心が凪いでいく気がする。


まやくんがお気に入りの場所だって言うのもわかるよ。




「ひなちゃん」

「……?」

「ひなちゃんがそんな顔してるのさ、アイツのせい?」




アイツって、と聞き返す前にまやくんが言葉を重ねた。




「藤川狼のこと、そんなに好きなんだ?」




前にもまやくんに同じことを聞かれたような気がする。

あれは、たしか……。




『好きなんじゃないの? あいつのこと』




そう、転校してきてすぐのこと。


あのときはからかい100パーセント、面白がるように聞いてきたまやくん、それに私だってまだ狼くんに対する気持ちの正体を知らなかった。



でも、今は。