わかりにくい気づかいに、沈んでいた心が少し浮き上がる。

ふふ、と笑みをこぼすと。



「ちょっと外の空気吸いにいこっか」

「えっ」

「教室にこもりっきりだと、滅入るしねー」

「や、えっと……っ!」



断る隙すらなかった。

まやくんって、けっこう強引なところがある。強引というか、ゴーイングマイウェイというか。

なにか口をはさむ前に、腕をとられて、そのまま流れるように教室から連れ出される。



「まやく……っ、どこに行くんですか……っ」

「いいとこー」

「いいとこって……!」



結局何もわからないまま、まやくんに腕をひかれるまま。

少ししてたどり着いた先は、中庭が一望できる渡り廊下だった。


────そういえば、いつかもここでまやくんと話して……それで、狼くんと遭遇したんだっけ。


だめだ、すぐに狼くんのことを考えてしまう。

切なくなって、ため息をこぼしそうになる。
あわてて、息をとめると。




「ここ、お気に入りなんだよね」

「まやくんの……?」

「そう、息が詰まりそうになったときに、来る場所」