「ひなちゃん、おーい、聞こえてるー?」

「……っ、あ、まやくん……」



休み時間。

ぼんやりと宙を見つめていたら、とつぜんまやくんに肩を叩かれてびっくりした。

どうやら、少し前からずっと呼びかけてくれていたみたい。



「なんか、今日、元気なくない?」



席替えをしても、なぜか毎度、隣の席になるまやくん。

どこか上の空の私の方へ、身を乗り出して怪訝な表情をした。



「はい……」



力なく頷く。
理由なんてひとつしかない。



『ひなになんて、出会わなきゃよかった』




昨日、狼くんが放った言葉が、強烈に突き刺さってしまって抜けないの。むしろ、突き刺さったところからじくじくと時間が経つにつれて膿んできているような。



今だけじゃない、過去まで、思い出までまるごとひっくるめて否定するようなセリフだった。

さすがに、ぜんぜん平気じゃいられない。



しっかりと傷ついてしまって、でもそれでも少しも狼くんのことを嫌いになれないから────大好きだから、余計にくるしいの。




『出会わなきゃよかった』



私のなにが、狼くんにあんなことを言わせてしまったのか、いくら考えても、わからなくて。