がりっと音がして、鎖骨に鋭い痛みが走った。

狼くんがはだけたその場所へ、容赦なく噛みついたのだと気づく。



「……っ、う」




しっかりと歯を立てられて、思わず身をよじって抵抗すると。


狼くんが温度のない瞳で私を見る。

そして冷えきった声が浴びせられた。





「簡単に言うな」

「……っ」

「そんな気持ちさらさらないくせに」




なじるような言葉は、あきらめや寂しさを孕んでいるようにも聞こえた。……けれど、狼くんにかける言葉を見つけられなかった。



何を言っても、はね返されて届かないような気がして。




……ううん、はじめて “怖い” と思ったからかもしれない。狼くんのことを心の底から。



怖い、私のこの気持ちを、狼くんに対する気持ちを、狼くん自身に真っ向から否定されてしまったら私はもうどうすればいいかわからないの。

だって、もう、心のほとんどが狼くんに支配されているのに。




何も言えずに、ただ黙りこむことしかできない。


そんな私に狼くんは、追いうちをかけるように冷たく吐き捨てて背中を向けた。





「……ひなになんて、出会わなきゃよかった」