「嘘だって知ってんだよ」
「……っ!」
ドン、と大きな音がした。
反射的に目をつむる、それからそうっと瞼を上げたときに気づいた、今のは狼くんが壁に勢いよく手をついた音だったんだって。
振り向いた狼くん、それから背後の壁、挟まれた私に逃げ場はなくて、おまけに狼くんの腕が檻のように私を囲っている。
声を上げることすらかなわなくて、ただひたすらに首を横にふる。
『嘘だ』なんて言わないでほしかった、狼くんを好きでいることくらいゆるしてほしかった────のに。
そんな私を、凍てつくくらいの鋭い瞳で、蔑むように見下ろした狼くんは。
「……じゃあ」
「……っ」
「────受け止められんの? 俺のぜんぶ」
少しも優しくない視線、声。
それでもその奥に隠されている狼くんの姿を知っているから、すべてひっくるめて狼くんのことが大好きだと思うから。
揺るぎない、迷うはずもなかった。
こくり、とすぐに大きく首を縦にふる。
その瞬間。
「っ、い……っ!」