狼くん、ふれるなキケン!



それから少しして、ホームルームが終わると。



「ひーなーちゃーんっ」

「っ、はい」

「行くよ、学校探検」



またたく間に隣の席の例の男の子につかまった。


案内してくれる……っていうよりかは、これじゃあ強制連行だよ。



自然な動作で私の手をとって、腕をひく彼。

腕がもげて体だけ置いていかれてしまいそうな勢いに、慌てて立ち上がって彼の背中をぱたぱたと追いかけた。



「あ、あの……っ」

「んー?」



最上階、4階から案内してくれるみたい。

階段を駆け上がって、たどり着いたここは、音楽室の前。



涼しい顔でやっぱりにこにこ柔らかい笑みを浮かべている彼とはちがって、残念ながら運動能力に乏しい私は肩ではあはあと息をつきながら。




「ひとまずお名前を……っ」




教えてください、と言うと。
彼はずい、と私に顔を近づけて。




「っ!?」

「あーれ、まだわかんない?」