- side ひな -






翌日。


朝起きると、薬がきいたのか、狼くんの看病がきいたのか、うだるくらいの熱はすっかりひいていた。



だけど、病みあがりだからということで、大事をとって今日も学校は休むことに。

それで、家で大人しく、学校に行った狼くんの帰りを待っていたのだけれど────。




「あの、どちらさま、ですか……っ?」




お昼を少し過ぎたころ。

インターホンが鳴ることもなく、ガチャリ、ととつぜん玄関の鍵が開いたのだ。

これは、一大事件。



あわてて玄関のところまで駆けていくと、侵入者、おひとりさま。


高身長ですらっとした男の人、さらっとした茶髪の爽やかで優しそうな面立ち。雰囲気は、大学生……っぽい。



焦げ茶の瞳とぱちりと目が合って、数秒。
みるみるうちに、彼の瞳が丸くひらいていく。



警戒心をぴりぴりとまとう私に、彼は。





「……もしかして、ひな?」

「へっ?」





わ、私の名前を知って……。

とすると、このひとは、まさか。





「忘れた? 俺のこと」

「えっと」

「────俺だよ俺、藤川(おう)




耳なじみのある名前に、記憶をさかのぼる。
コンマ数秒、のち。




「えええ……っ?!」





驚きの絶叫が響きわたった。