でも、気づいたときには。



「他の子に優しくしちゃ、や……っ」



いやなの。

見せないでほしい、優しい表情も、仕草も。
聞かせないでほしい、ふとしたときに柔らかくなる声も。


……誰にも。



想像するだけでも苦しい、少し前に小雪ちゃんに言われたことがほんとうなら────これが独占欲というものなら、なんてやっかいな感情なんだろう。




「私にだけ、やさしくして」

「……言ってることめちゃくちゃ」




狼くんの耳には戯言のように聞こえているのかもしれない。

だけど、ほんとうのことだもん、ぜんぶ。



私の頭のなかは、もう、とっくにめちゃくちゃだ。狼くんのせい、で……。




「熱でおかしくなってるんだろ、どうせ」

「おかしくなってない、よ」

「……風邪ひいてるのは事実。黙って早く寝ろ」




ぶっきらぼうにそう言われる。


きゅっと唇を結んで、それから……あと、ひとつだけ。

ひとつだけ、わがまま、言ってもいい?





「……狼くんが、ぎゅってしてくれたら、寝るの……っ」





今朝起きる前に見た夢。
どうにかして、現実にしたくて。

夢のなかだけじゃ、ぜんぜん足りない。