翌朝、目が覚めると狼くんはすでに隣にはいなかった。

おかしい、だって狼くんは朝すっごく弱いのに。
低血圧でにぶくてフキゲンでものすごーく大変なのに。



だから、一瞬、昨夜の出来事はぜんぶ、まぼろしだったのかとショックを受けて愕然として……でも、見上げた天井が、たしかに狼くんの部屋のもの、だったから。




「っ、狼くん、今日早くないですかっ?」




あわてて洗面所に向かうと、すでに狼くんはしゃきっと立って学校に行く準備をはじめていた。


そう、しゃきっと……しゃきっと?




「あの、狼くん」

「……なに」

「目……すごい、クマが」




びっくりした。
狼くんの下まぶた、思いっきりクマ。

寝不足だって誰もがみてわかるほどすごいクマができていた。




「もしかして……、寝れなかったんですか?」

「……こうなったのは誰のせい」

「えっ」




また、私のせいなの……っ?

ということは、おそらく……。





「わ、私、そんなに寝相わるかったんですか……っ?」




狼くんの安眠をさまたげてしまうほど……、と思うと申し訳なくて半べそをかいていると。




「……ばかだろ」

「ばか、って」

「そのまんまの意味」





うっ、と心にダメージを食らいながらも、しぶしぶ私も狼くんの隣に並んで髪の毛をとかす。