狼くん、ふれるなキケン!



「……狼くん」



そういえば、と狼くんのひろい背中に呼びかけた。




「なに」

「今日、どうして怒ってたんですか……?」

「いつ」

「帰り、です」




厳密にはそこからずっと、だ。


小雪ちゃんの家から帰ってくる途中ばったり会ったときから。

それ以来ずっと、家でも不機嫌だったもん。




そしてあれは、単にイライラ……というより、ほんとうに何かに怒っていたようにみえて。


純粋に疑問に思って聞いたのだけど、それに対する狼くんの答えはまったく予想外のものだった。




「……ぜんぶ、誰のせいだと思ってんの」

「え」

「この前、俺の帰りがおそいとか、誘拐されただとか、わーわー騒いでたのはどこの誰」

「っ?」


「そのくせ自分は遅くなっても平気な顔して、男とのこのこ帰ってくるとか身勝手すぎ」

「え……っ」




まさか、そんな理由でだとは思わなかった。




「いつも先に家に着いてうるさく出迎えてくるやつが帰ってこなかったら、何かあったと思うだろ、ふつう」



言い方がトゲトゲしい、けれど……。
都合よく言い換えれば、それって。




「もしかして、心配……してくれてたんですか?」




あのときばったり会ったのは、もしかしなくても、帰りが遅くなった私を探しにきてくれていたからなの……?



────前に、私が狼くんに対して、そうしようとしたのと同じように。





「何か文句あんのかよ」

「ないですっ、うれしいです……!」