昔、狼くんの家におじゃましたときに、狼くんママがよく作ってくれたホットミルクの味。
すごく好きだったの、狼くん、覚えてくれていたの……?
幼い頃は『お子さまたちにはまだ早いわね』とシナモンはおとなたちだけの特権だったの。だから、すごく羨ましく思っていて……。
いま狼くんが淹れてくれたのは、そのシナモン入りのホットミルク。
わたしたちも、もう、なにも知らないままの子どもじゃない。こんなに大きくなったんだ、ってふと実感させられた。
「……落ち着いた?」
「はい」
こくり、とうなずく。
ホットミルクのやさしい甘さと、手間ひまかけてこれを作ってくれた狼くんのやさしさが染みわたって、満たされた。
「これで寝れそう?」
「……たぶん」
こくっと頷く。
じゃあ、と狼くんは私の手から空になったマグカップを取り上げた。
「洗い物はしとくから」
「え……」
今日、家事当番は私だったのに。
狼くんの気づかいを無下にはできなくて、お言葉に甘えることにする。
ありがとう、と頭をさげた。
「……おやすみ」
「おやすみなさい」



