ひとりになると、あのおぞましいゾンビの映像をふいに思いだしてしまって、うっと目眩がした。
それでも、大人しく待っていると。
「ひな」
数分後、キッチンから戻ってきた狼くんは片手に湯気が立ちのぼるマグカップを持っていた。
そして、それをそうっと手渡してくれる。
「……これ」
カップのなかで揺れているのは白くてぬくもりを感じる液体。
甘くてほっとする香りがただよってくる。
「ホットミルク、ですか?」
「それ飲んで大人しく寝れば」
「……作ってくれたんですか」
わざわざ、私のために。
何も答えない狼くん、それが無言の肯定だということはちゃんと知っている。
まだあたたかいホットミルクには少しも口をつけていないのに、じんわりと体があたたかくなっていくのがわかった。
「ありがとう、ございます」
ゆっくりとマグカップに口をつける。
流れこんできたホットミルクは、あつあつじゃなくてぬるくてやさしい温度だった。
もしかして。
私があついの、苦手だって知って……?
心地よい温度の液体が舌に染みわたって広がっていく。
あたためたミルクに溶けているのは、つぶしたバナナとそれからシナモン。
「……なつかしい味」



