「狼くん……?」
「……あのな」
顔をおおう手の、指のすきまから、狼くんの瞳がちらっと見えている。ちょっと熱っぽい。
「あんまそういうこと言うな」
「……そういう?」
「……かわいいこと言うなっつってんの」
かわ……。
そのワードに一瞬、期待しかけた。
「俺が死ぬ」
「え」
きゅうに “死ぬ” だとか物騒なことばが聞こえてきて、耳をうたがった。その勢いで、涙もひっこんでいく。
し、死んじゃうの……?
う、やっぱりそれほど私のことが嫌いなんだ。死んじゃいそうになるくらい。
期待があっさり打ち砕かれて、内心めそめそしていると。
何を勘違いしてるのか知らないけど、って狼くんが呟いて。
「……理性が死ぬんだよ」
「……っ、りせい……?」
「ここにいるのがほかの男だったら、とうに食われてるから」
くわれ……?
よくわからなくって、きょとんとするけれど、最初から私にわからせる気はなかったらしい。
ふー……と息を吐き出してから、狼くんはやっぱりリビングを出ていこうとする。
「行っちゃうんですか……?」
「……台所、行くだけ」
なだめるみたいにそう言って。
「そのままじゃ、寝れないだろ」
赤くなった私の瞳をちらりと見て、言葉どおりキッチンの方へすたすたと歩いていく。



