一度ゆるんだ涙腺は、なかなか元には戻ってくれないらしい。
もう慣れっこだというのに、狼くんの “無理” がやけに胸につきささって、またぶわっと涙がこみ上げててきた。
悲しい……とはまたちがう。
切ない、ってこういうことなのかもしれないと思った。
ぐすぐすと鼻をすすっていると、狼くんが甘やかすみたいに頭をそっとなでて。そして、きゅうに立ち上がる。
「……?」
とつぜん離れた体温が寂しくて。
思わず狼くんの姿を目で追うと、リビングから出ていこうとするから。
「ろ、うくん」
部屋着のすそを掴んで引き止めてしまう。
なに、って視線をよこした狼くんに、心のなかにしまっておくはずだったワガママが口からすべり落ちていく。
「あ、の」
「……?」
「もうちょっと……そばにいてほしい、の」
うるんだ瞳でじっと見上げれば、狼くんは「あー……」と苦しげに呻いて、顔を手のひらで覆い隠してしまった。



