狼くん、ふれるなキケン!




きっと、とつぜん涙がこみ上げてきたのは、単純にゾンビ映画がこわすぎたのと、ひとことも話してくれなかった狼くんがようやく口を利いてくれて安心したからの、半分はんぶん。



狼くんの体温に落ちついて、涙よりもどきどきの心拍数のほうが上回りかけたとき。





「こういうの、苦手?」




狼くんが指さしたのは、まだ不気味な音を立てているテレビ。





「……怖かった?」





画面のほうは絶対に見ないようにしながら、こくりとうなずいた。泣いてしまったのはそれだけの理由じゃないけれど……。



でも、こわかったのも十分ほんとうだ。

まだ体の変なふるえが止まってくれなくて、ごまかすみたいに狼くんの胸にぎゅっとしがみつく。





「……っ、はー……」





すると、あたまの上から、狼くんの何かをこらえるような吐息が落ちてきた。


直後、プツッとテレビの電源が落ちる音。
どうやら、見かねて消してくれたみたい。





「……あの、ごめんなさい……」





狼くんは毎週、この番組を楽しみに見てるのに。


申しわけなくって俯くと、狼くんはあきれたような口調で。





「……別に。そのままびくびく怯えてられるほうが無理」