耳をぴったりとふさいでいた手のひらを、鬱陶しげに剥がされる。
びっくりして目を開けた瞬間。
「っ、ひゃ……!」
テレビの画面に映し出されたのは、どういうわけかゾンビ化した主人公のどアップ。しかも血みどろ。
あわせて恐怖をあおるような効果音。
「ふぇ……っ」
こわさの限界を突破して、頭がまっしろ。
衝動的に、目の前の狼くんの胸のなかに飛びこんで、ぎゅっと抱きついてしまう。
「っ、おい」
あわてたような狼くんの声がきこえる。
でも冷静になんかなれなくて、ぎゅーっと狼くんの背中にまわした腕にますます力が入った。
「……ひな?」
狼くんの胸にぐりぐりとあたまを押しつける私に、狼くんはますます困惑しているみたい。
でも、その声は冷たくなかった。
やさしくてあったかい声で名前を呼んでくれる。
「うう……、ぐす……っ」
そんなつもりじゃなかったのに、ぼろっと涙が勢いよくこぼれ落ちた。
一度溢れると、堰を切ったように、なかなか止まってくれない。
ぽろぽろと涙をこぼす私にはじめは固まっていた狼くん。
少しすると、そっと遠慮がちに背中に腕を回して、とんとんとあやすように背中をなでてなだめてくれる。
困ったような、心配してくれているような。
その慣れてない不器用な手つきがいとしくて、余計に涙がとまらなくなった。



