「ふ、そっか」
「……?」
「じゃー、覚悟しといてよ」
「カクゴ、ですか?」
「遠慮するつもりないから────ってことで」
はい、と目の前に差しだされた手のひら。
なにかを待っているようだけれど。
「なんですか、この手のひら」
「何って、ほら、手ちょうだい」
「えっ」
「繋ぐんだよ」
なんで?
純粋に疑問。
なのに、断る隙を与えてくれなくて、捕らわれてしまった手のひらに戸惑って、引き離そうとするけれど。
「おれに、迷子になってほしくないんでしょ?」
「だからって、手を繋ぐ必要ありますっ?」
「あるよ、そういうもんなの」
ご、強引……。
結局、離してくれることはなく繋がった手のひら。
歩いているうちに本格的に暗くなってきて、街頭の灯りがちかちかと点灯しはじめる。
そのほのかな光に照らされた繋がったままの手をじっと見つめる。
変な感じ。
でも、ちがうって思った。
狼くんにふれているときとは何もかもがちがう。
心臓がばくはつしそうになったり、しない。
そわそわ落ちつかない気持ちにもなったりしなくて、心のなかにあるのはただただ戸惑いだけ。
これが “好きな人” とのちがいなのかな、ってそんなことをぼんやりと考えた。



