おかしいのかもしれない、だって、私は狼くんの近くでいられたらそれだけで────って思っていたのに。
「なにもおかしくないよ」
「え……」
「それくらい、藤川くんのことが好きだって証拠でしょ?」
「好き……?」
違和感がある。
好き、ってこんな気持ちなの。
わからない、わからないけど……。好きって、恋をするって、もっと楽しくて幸せなことだと思ってたから。
こんなにあたまがぐらぐらして、苦しくなって、おかしくなりそうな気持ちが、恋なんて、信じられない。
「独占欲っていうんだよ、ひとりじめしたい、自分にだけふれてほしいって思うのは」
「どくせんよく……」
「それは、おおよそ恋愛感情とセットなのね」
もやもやの正体に名前がついた。
狼くんがふれるのも、笑顔をみせるのも、弱いところをみせるのも、大切だとおもうのも、好きになるのも、わがままってわかってるけど、私だけがいいよ。
それは────
やっぱり知らず知らずのうちにおかしくなっていたんだと思う。
名前も知らない熱に浮かされて。
「……狼くんのことが、好き」
妙にしっくりと胸に響いた。
きっと、この熱の名前は、“恋わずらい” 。



