「えへへ、実は……」
それから人差し指をくちびるの前でしぃっと立てると、道枝さんは「だいじょーぶ、秘密ごとってことでしょ」と言ってくれた。
「でも、よかったね! 大チャンスじゃん」
「チャンス……?」
「藤川くんのこと、好きなんでしょ?」
「へ」
思考が停止する。
ぼけっとした表情の私に道枝さんは不思議そうに瞬きを繰りかえした。
「あれ、その調子じゃまだ自覚ナシだったかー」
「自覚……って」
「藤川くんのこと、好きって思ったことない?あー……もちろん、恋愛的な意味でだよ」
ライクじゃなくてラブのほうって、補足してくれるけれど。
「わ……かんないです……っ」
前にまやくんに同じことを言われたときもそうだった。
狼くんのことで、そういう風に言われると、心臓のあたりがそわそわしておかしくなっちゃう。
いつも、あたまのなかが、わーっとなってしまって冷静に考えられないの。
「たとえば、他の男の子とくらべて……とか」
わからない。
だって、私にとって狼くんはいつでもたったひとりの狼くんだ。
誰かと比べたことなんてないもん。
「うーん、じゃあ、こういうのはどう?」
「……?」
「想像してみて。藤川くんには好きな女の子がいるの、それで藤川くんの方から “好きだ” って告白して────」
「……っ」



