「あのっ、夕ごはんの準備ができたので、降りてきてくださいって、言いに来たんです!」
「……」
無反応、のち、すっと逸らされた視線。
どうしても、その仕草に寂しさをおぼえてしまう。
ぎゅ、と手のひらを握って、気を取りなおして────狼くんママの頼みだもん、降りてきてくれないと、困る。
……でも、その前に。
「……狼くん、私なにかしましたか?」
「……」
「気に障ること、しちゃったかなって……だって、狼くん、訳もなくこんな風に無視したり、しない、冷たくしたりも、しない、ですよね」
全然、心当たりなんかない。
狼くんがすっかり変わってしまったんだと、私の知ってる狼くんはもうどこにもいないんだと、そう認めてしまったほうがきっと、早いんだって、頭ではわかっている。
でも、やっぱり。
……やっぱり、まだ。
「何かしちゃったなら、謝りたくて、だから……ちゃんと言ってほしい、です」



