むう、狼くんなんで無視するの?
そうこうしているうちに、狼くんママがせっかく作ってくれたお料理たちが冷めちゃうよ。そんなのもったいない。
「ねえ、狼くんってば……!」
うんともすんとも返してくれない狼くんに、さすがの私も痺れをきらした。
よおし、こうなったら、最終手段。
ドアノブに手をかけて────そう、強行突破あるのみ。
部屋に鍵はついていない、勢いよく押し開ける。ガチャリ。
「もうっ、狼くん無視はだめで……っ!?」
びっ……くりした。
息がとまって、心臓が大きく跳ねた。
てっきりベッドに寝転ぶか座るか────ともかく、部屋の奥の方にいると思っていた狼くんは、まさかの、ドアを開けた目の前に仁王立ちで待ち受けていた。腕まで組んじゃって。
驚いて固まった私を狼くんが鋭い目で見下ろしている。
「……」
何も言わない狼くんだけど、無言の圧がすごい。
その圧に危うく屈してしまう直前で思い出した。
そう、夕食……!



