まやくんは、他のみんなみたいに狼くんを怖がって近づかなくなる、なんてこととは無縁だったの。それだけ聞けばいいことのように思えるけれど、実態はその真逆。
部屋のすみっこで狼くんと私がふたりで遊んでいるところへ、事あるごとにちょっかいを出しにきては────
『せんせえー、あいつ、コワい顔でにらんできた!おれ何にもしてないのにー!』
『こら狼くん、真矢くんにイジワルしないの!』
毎度のごとく、狼くんに意地悪されたと先生にうったえては、わんわん泣きだす始末。
狼くんが何もしていないのは明らかなのに、あんまりにも先生に怒られるから、『狼くんはとってもやさしいの!いじわるなんかしてないもん!』と反論したのに。
『でもねえ、まやくんこんなに泣いてるし……。ほら、狼くん、まやくんに謝らないと』
ぐすんぐすんと鼻をすする泣き虫まやくん。
そんなことが、あんまりにも毎日続くうちに、私は気づいてしまったのだ、まやくんのそれはわざとなんだって。
わざと狼くんに近づいていやがらせしてるんだ。 どうしてそんなことするの、まやくんってずる賢い。
まやくんのせいで、狼くんがいつまでたっても悪者扱いされるから、あの頃の私は泣き虫まやくんのことがかなりかなり苦手だった。
────という昔話をかいつまんで説明すると、道枝さんは「なるほどねー……」とまやくんの方をちらりと見て、苦笑いを零す。



