「……?」
きょとんと首を傾げた狼くんママ。
慌てて首を横にふる。
「や、やっぱりなんでもなかったです〜っ」
狼くんママにわざわざ聞くようなことじゃないよね。
それに、まだ狼くんがまるきり変わってしまったと決まったわけじゃ……と一縷の望みをかけているのも事実。
だって、あんなに優しかったもん。
ずっと仲良くしてくれてたもん。
うんうん、とひとり頷いていると。
「そうだ、ひなちゃん」
「はいっ」
「狼のこと呼んできてくれないかな、そろそろ夕飯にするから降りてきてーって」
狼、部屋にいるはずだから、と。
そんな狼くんママの命をうけて、再度2階へ。
狼くんの部屋の前、しっかり閉ざされた扉。
こんこんこん、とノックする。
返事なし。
「あのう、狼くーん」
「……」
「狼くん!いますよねー!?」
────返事なし。
こんこんこん、がどんどんどん、に変わる。
何度呼びかけても何度ノックしても、だめ。
ぜったいそこにいるはずなのに、狼くんは出てきてくれない。



