狼くん、ふれるなキケン!



「どうして、そんなに……」



喜んでくれるんだろう。

心あたりなんか少しもないから、不思議で仕方ない。


そう思っていることが、顔にくっきり出ていたのか狼くんママはふふっと笑って。




「だって、あの子たちにとって、ひなちゃんは大切な幼なじみだもの」




あの子たち、というのは。
きっと狼くんと桜くんのこと。




「狼もひなちゃんが戻ってきてくれたこと、嬉しいと思ってるはずよ」

「……っ、そんなことはない、です」




だって、狼くん嫌そうな顔してた。
覚えてなかった、って飄々とした顔してた。


む、と眉を寄せた私を、狼くんママがあらあら〜、となだめてくれる。

その穏やかさは、私が知っている狼くんにはしっかり受け継がれていたの。




夢でもまぼろしでもない、あの頃の狼くんはちゃんと……。




「あの、狼くんっていつから……」




あんな感じなんですか、と聞こうとして言葉につまる。



狼くんママはあくまで狼くんのママだもん。
こんなことを聞けばさすがに失礼かも。




だって、おたくのお子さんいつから素行不良なんですか?……なんて聞いているようなものだもん。